6月21日に発売となったブルーピリオドの5巻。今回は、八虎が受験した東京藝大の一次試験の結果と、ユカちゃんこと龍二について描かれていた巻でした。今回の表紙は八虎と同じ予備校に通う桑名マキちゃん。
この鬼気迫る表情が良いですよね。ブルーピリオドの表紙は描かれている人物の表情がたまらなく良くて、これだけでしらばらく見入ってしまいます。
さて、ここからは少しネタバレになりますので、未読の方はご注意を。
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八虎の藝大一次試験は三日後
とにかく気になっていたのは、八虎の一次試験の結果です。一次試験の内容については4巻で描かれていたのですが、そこで思わぬトラブルがありました。試験で使う鏡が、アクシデントで割れてしまったんです。焦る八虎でしたが、そこで新しい発想を思いつきました。
そうして終えた一次試験。三日後に発表される結果発表を待つ間、予備校の講師である大葉先生は「息抜きにいきましょう」と提案します。結果が出るのはまだでも、次の試験があるのに息抜き……? と、八虎達は戸惑いますが、大葉先生曰く、結果が出るまでの三日間は集中力が落ちるのだそうです。
それにただの息抜きというわけではなくて、二次試験の事を彼らに伝えて「一度自分の考えを整理するために外の刺激を受けるのもアリじゃない?」と言うと、八虎たちは息抜きに出かけます。
翌日、向かった先は「骨の美術館」。恐竜の骨などた展示されているみたいですね。これ、私も一度行ってみたいなと思いながら読んでいました。それで見学を終えたあとは、予備校に戻ってこの美術館を元に製作をするとのこと。ここの絵で予備校生たちの似た視点と、違う視点が描かれているのが面白いなと思いました。
そして気になる結果発表。油画専攻で一次試験通過したのは八虎、橋田、マキちゃんの三人!良かった!!
久しぶりの龍二
そして久々に龍二が登場します。しかし何だか様子が変。学生らしさが消えてどこか妖艶さが増して――八虎もおかしい、と思います。ですがそこで龍二から「美大に行かない」と聞いた八虎は動揺します。
無理に自分を納得させようとした時、予備校生から龍二が画用紙に大きく×を書いて途中退室をしたと聞いた八虎は、思わず龍二に電話をしますが……。
「正しい場所からしか話せないなら、アタシがお前に話す事は何もないね……っ!!」
と電話を切られてしまいます。
その後は龍二の家のシーンが描かれているのですが、彼の両親は龍二に対しては酷く辛くあたります。今までも時々描かれてはいたんですが、見る度に、龍二の両親の表情が怖い。とにかく、怖い。生き物ではないような怖さを感じました。たぶんこれは龍二から見えている両親の姿なのではないかな、と。
そんな龍二に優しいのはおばあちゃんだけ。龍二はおばあちゃんが大好きですが、でも、思う所もあるようです。
龍二に言われた事を引き摺る八虎
龍二の事を引き摺っている八虎は、橋田から言われた「優等生」という言葉に思わず反応してしまいます。そうして言われた事を話すと、橋田は笑って答えます。
「その人と話したかったら、八虎も飛び込むしかないんやで」
より分からなくなってしまった八虎は、予備校生から龍二の作品を見せてもらいます。龍二の専攻は日本画のはず――なのですが、何故かその絵よりも洋服を描いた絵の方が「良い」と感じます。
そこで龍二の言葉を思い出し、八虎は龍二が何故日本画をやっているのか疑問に思うようになりました。
――――その頃、龍二の方は大変で。両親によって部屋の荷物を全て捨てられてしまったのです。しかし荷物はおばあちゃんが拾って持ってきてくれたのですが……。この時の龍二の泣く表情が本当に複雑で、彼の心情を良く表していました。
八虎と龍二と海
ちょっと外に行って来ると家を出た龍二。そこへ八虎からの電話が。
龍二の居場所を聞いてやってくる八虎に、龍二は「溺れに行かない? 海に」と言います。そうして二人は電車で海に向かいますが……。
ここから、ようやく八虎は龍二の本音を聞く事が出来ます。
この二人の関係は、実はちょっとまだ良く分からないんですよ、私。一巻は何かソリが合わないのかな~と思って見ていたんですが、読んで行くにつれて何か違うなって。友達、仲間、色々考えたんですが、自分の中でしっくりくるのが「鏡合わせの正反対」でした。
龍二の本音の部分は是非、漫画で読んで頂きたいです。
良い意味心を抉ってくる
ブルーピリオドという作品はスポコン美大受験漫画とのキャッチフレーズの通り、スポコンです。血を吐くような努力や、苦悩や、その色々が凝縮された物語です。
将来に向けて努力するという、言葉にすると明るい。けれど現実は光に照らされた部分だけではなく、暗い影がずっと隣にあります。
絵を描く事は孤独であり、けれど絵の世界は多種多様。そしてそれに向き合う人の内面、どろどろした部分――そこが学生という登場人物達の青春がしっかり描かれています。
そしてその眩さと、苦しさが、良い意味で心を抉って来る。次の6巻が楽しみです。
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