SF作品を思い浮かべた時にまず思い出すのは「猫の地球儀」というライトノベル作品。
猫の地球儀の登場人物はロボットと猫だけ、という言葉だけで聞くと可愛らしい雰囲気なのですが、なかなかシビアな世界観で、容赦なく心を抉って来る――そんな作品です。
かわいくて、苦しくて、その二つが共存する、本当に秀逸な物語でした。発売された当時に読んで、かなり衝撃を受けたのを覚えています。これを読んで、自分の中で物事に対する見方が少し変わったのをよく覚えています。
そしてそんな猫の地球儀と一緒に浮かんでくるのは田中ロミオ先生の『人類は衰退しました』という作品です。
全9巻+短編集2作の計11冊。
人類がゆるやかな衰退を迎えてはや数世紀、人類の数はぐっと減り、その代わりに『妖精さん』が、主人公のわたしちゃん曰く『今の人類』になった時代が物語。ほのぼの、コミカルなテイストで進んでいく、ほぼ一話完結の連作短編のライトノベルです。
私がこの作品を読んだのは、アニメ化されてしばらくしてからでした。小説を書く際に読むと参考になる本との事で読み始めたのですが、あっという間に惹き込まれました。
この物語は「わたし」の一人称で進みます。結構難しい表現や漢字なども混ざっているのですが、それがするっと頭の中に入ってくるような軽快な流れ。語り部の「わたし」ちゃんの文章が小気味良いんです。
そして「物語とはどう書いても良いのだ」という事を、作中でしっかりと教えてくれます。二重線で消されている文章もあれば、絵本チックな場面もあり、とにかく「読む」という事が面白いんです。物語として、そして視覚的にも。
物語の流れは基本的にはほのぼのかわいいのですが、深い部分ではかなりシビアで、濃厚なSFが描かれています。私はランドリオールのように「一つの物語が終わったあとの物語」というものが大好物なのですが、この作品は人間の世界が終わった、もしくは終わりかけている物語です。もちろん大好物です。
とにかく色々な手法や表現が使われていて、どの巻も読み応えがあります。よくここまで詰め込んだな、というくらい。それでもちゃんと形を保ったまま、ラストまで駆け抜けているのですから素晴らしい。一応、流れとしては1巻から進むので、最初から読んだ方が良いのですが、途中から読んでも問題はないかな、とも。
物語としても面白いですが、前述の通り、文章を勉強するにも良い本だと思います。難しい漢字や表現は辞書で調べれば出てきますし、何より読んだ後にびっくりするくらい語彙が増えます。機会があれば読んで頂きたいオススメの作品です。
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